2020/11/07
中高一貫校の「高校募集」は絶滅するのか②
神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。今春の兵庫県公立高校の一般入試(正確には「学力検査による入学者選抜」)、新型コロナウィルスの影響で直前で塾が休校(塾?)する等、受験生は精神的に負担が大きかったことでしょう。ただ、兵庫県の場合は内申点が5割ありますから、たとえ自習であってもそれなりに緊張感を持って勉強していたのであれば、そうそう大きく学力が落ちることはなかったかと思いますウィルス感染により学力検査が受けられなくなった生徒への救済措置として、今年度に限り「追検査」実施の発表がありました。ただし、5科目の学科試験は行われず面接のみで、調査書および面接結果等の諸資料を総合して合否を判断することとされ、ここでも「兵庫は内申重視」の姿勢が見えました。
お隣の大阪府の公立高校の一般入学者選抜。兵庫県との大きな違いは①英語、数学、国語で難易度の違う3種類の問題を用意。各高校が選択する。②「内申点:学力検査点」の比率は「3:7」「4:6」「5:5」「6:4」「7:3」の5パターンから各校により選択する。の2点。「発展的問題」×「3:7」の高校と「基礎的問題」×「7:3」の高校ではかなりの幅があることは想像に難くないでしょう。この2点だけでも、トップ校対決では大阪府が「圧勝」でしょうね。兵庫県のそれぞれごく一握りの「上澄み層」ならなんとか対抗できるかな。「大阪の公立トップ高校は現役では殆ど国立を受けない」なんて声も聞いたことがありますが、実際の大学入試実績を見ても大阪のトップ公立高の国公立志向は間違いないでしょう。
兵庫県ではいわゆるトップ校と言われる高校に入るにも、公立中のセンセ―たちに「内申点」という縄で縛られ、またそれが「絶対評価」と言う名の「先生の好き嫌い」で決まってしまう…「公立信者」には都合の悪い話でしょうが、これは実際に公立中に通うお子さんが吐き捨てるように「告発」されたもの。「先輩から『あのセンセ―にはこう接すれば嫌われずに済む』みたいな話を聞いて、実際にそうした子が本当にそのセンセ―に気に入られるんですよ。そいつ裏があっていじめの親玉なんすけど、センセ―たちだけが知らないんですよ。ホント、アホらしくて。僕っすか?気をつけてたつもりだったんですけど、ついそんな気持ちが態度に出ていたらしくて。そいつよりはるかにデキるはずなんすけど、通知簿は『完敗』っす。」こんなことが平気で罷り通っていても「公立トップ高出身者はセンセーの評価をうまく取れる能力のある人が多い」などと嘯いていられるのでしょうか。これでは子どもたちも大人や社会に幻滅しますわな。
大阪府のやり方、東京では既に実施されていたもの。都立高入試を変えたことで、長らく低迷を続けていた都立高の名門が大学入学実績で「復活」してきたのです。それに続いて「公立中高一貫校」も生まれました。公立中高一貫校も「共通問題」の他に「各校独自問題」を適性検査で導入する等、各校が掲げる「アドミッションポリシー」に合致する生徒を集めるべく様々な工夫をしています。今や首都圏では公立中高一貫校受験も中学受験の一大ジャンルとなりました。そんな公立中高一貫校が今度は「高校募集停止」を打ち出してきたからには、それ相応の理由があるはず。このお話しもう少し引っ張り(?)ます。では、また。
2020/10/24
中高一貫校の「高校募集」は絶滅するのか①
神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。前回の引きで「都立の『公立中高一貫校』において、高校募集を停止して中等教育学校に移行すると発表したところが出てきた」と書きました。具体的には、都立の併設型中高一貫校である両国、大泉、富士、武蔵、白鷗が、2021年から2022年にかけて高校募集を停止、中等教育学校に移行することを決定した、ということです。
私立の中高一貫校でも高校募集をする学校としない学校があります。例えば、灘は定員を減らしつつも高校募集を継続しています。説明会では「高校入学生が中学入学組に刺激を与えてくれるから」という話があります。かつては1クラス分募集だったため、高1の間は完全に別カリキュラムで進度を合わせてから高2で中学組と合流でしたが、現在は入学時点で中学組と混合されます。一部別クラスでの授業はありますが、1年間別クラスよりは負担が大きいようです。一方、甲陽学院は灘と足並みを揃えて実施していた高校募集をすっぱり止めました。「完全廃止ではなく様子を見て再開もある」との含みは残していますが、中学入試の合格者数を見ると当分再開はない?高校募集時は中学入試発表時の合格者数は頑ななまでに165名ちょうどだったのが、高校募集中止後はかなり多めに合格を出すようになりました。「完全」一貫なら、少々定員オーバーでも構わないということなのでしょうか。
元々「『完全』中高一貫」を標榜している学校は「高校から入学する生徒がいると中学組との合流を考える必要があり、どうしてもカリキュラムに制約が出てくる。中高の枠を取り払った6年一貫ならではの教育課程を組みにくくなり、それでは中高一貫の良さが減ってしまう。」と考えています。大抵の進学校は高2で中高内容を終わらせ、最後の1年間は大学進学指導に充てます。確かに進度が速いこともありますが、中学と高校で重複する内容を一本化して合理的なカリキュラムを組めることが大きなメリットでしょう。中学段階で数学を「代数」「幾何」、理科を「物理」「化学」「生物」「地学」に分けて授業を進めることも珍しくありません。ただ、それを効果的に進めるためにも一定の学力レベルが必要であることは言うまでもありません。
「私立だと同質の子ばかりが集まって純粋培養される」という意見もあるようですが、私立に行かれた方、私立にお子さんを入れた方、この意見どうでしょう?先の理由で、学力レベルは確かにある程度揃えられていますが、生徒の個性という点で言えば「同質の子ばかり」というのは「は?」じゃないでしょうか。お子さんを私立に入れたあるお母さん「ウチの子、ハッキリモノを言い過ぎるから小学校でもセンセ―に嫌われてね。兵庫県の公立高校入試って半分内申点でしょ。公立中でも絶対センセ―と反りが合わないから、それなら私立でもいいかって。で、私立に行ってみたらウチの子『お前、個性ないなぁ』って言われたらしくて。入学後の作文で『僕は小学校では変な子と言われていた。だけど、この学校に入ったらみんな変な子だった。』と。入れて良かったと思ってます。地元の公立中に行ったお友達のお母さまと話をしたのですが、既にいじめがあると話していました。公立中の方が同調圧力がスゴイので、個性なんかうっかり出せないって。」
公立中高一貫校が高校募集を停止して「完全」を目指す理由も、これらの話と無関係ではないようです。その話は次回に。もうしばらくお付き合いいただいて全体の文脈を掴んでいただければ幸いです。では、また。
2020/10/14
私立or公立?
神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。文科相の「身の丈」発言で不信・不満が噴出して民間英語試験の採用が見送られる等、大学入試改革が混乱しているのはご承知の通りでしょう。ですが、今の子どもたちが否応なく「グローバル社会」に放り出されることは間違いなく、「英語4技能」を育成することや「能動的な学び」で「思考力」「表現力」を養成することがもはや「お題目」となっています。
今春中学受験をした子どもたちが大学入学年齢になる頃には、まだまだいくつも問題は抱えているとは思いますが、さすがに大学入試の方向性は定まっていることでしょう。でも今は「変わることは確実だが、どう変わるかがまだ見えない」という状況。「どうせ中学受験するなら、大学進学のリスクを少しでも軽減したい」と思うのも無理はないところ。今春の中学受験でも、難関大への進学実績が高い学校の他に大学附属校の人気が高かったことは紛れもない事実。首都圏では「早慶上理」そんな贅沢言わないわ「MARCH」行ければ上等、現実的に考えてその次のランクでも…といったところでしょうか。阪神間だとピンと来ないかもしれませんが、「MARCH」はもう古くて今は「SMART」と言うのだとか。阪神間でも「関関同立」「産近甲龍」の序列はもはや怪しいところもありますしね。
関西では首都圏より「国公立」信仰が強いので、「私立中に行かせるのは『国公立大』に行かせるため。『関関同立』でいいのなら公立高校からで十分だ。」という考えが根強くあります。その理由はズバリお金です。関西人の気質として「同じ成果なら安くあげること」に価値を置くところがあり、大学内の会話でも「お前私立から来たん?金かけてもろたんやな。オレ公立からやから親孝行やで。」現役で塾通いしても間に合わず、浪人してバカ高い予備校に通ったことは内緒のようです。公立高は現浪比率もあまり詳らかにしませんけれど、公立トップ校と言えども「関関同立」に一発で行くのはそんな簡単なことではないですよ。親御さんももう少しベンキョ―してください。
それと公立出身の人にご忠告。私立出身者から「公立のヤツは堅くてつまらん。プライドばかり高くて他人の話も聞かんのが多い。」と思われていますよ。中学の頃からずっとセンセ―の評価ばかり気にしていたからでしょうか。あと、会社に就職後に「昇進試験」があるのですが、そこでも公立高出身者より私立中高一貫校出身者の方が有利なんだそうです。教科書通りの定型試験型より、時事問題や文章題等の読解型の方が「社会」で役立つようです。
「私立or公立」という対立軸でお話をしてきましたが、長期凋落傾向だった公立高が私立の優位性を「中高一貫」に見出だしたことは、首都圏を中心に全国で「公立中高一貫校」が増えたことでもわかります。さらに、都立の「公立中高一貫校」において、高校募集を停止して中等教育学校に移行すると発表したところも。私立の最上位校では高校募集を行わない「『完全』中高一貫」が存在していましたが、高校募集停止の意図はどこにあるのでしょうか。その話は次回に。では、また。
2020/08/29
【2020年入試】国語の傾向と対策~甲陽学院中編②~
神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。「甲陽学院中の国語」2回目です。
さて、前回は甲陽学院中の「少年の成長の姿」についてお伝えしました。今回は「いかにも理論的な」甲陽学院中の国語について、少し覗いてみましょう。甲陽学院中と言うと「灘中の次だから」とか「灘中は無理だけど甲陽学院なら」とか、そんなイメージで受験を考える方もいらっしゃいますかネ。でもそれは偏差値の問題だけではないトンデモナイ誤りかもしれません。「受験国語は学校から受験生へのメッセージである」と述べましたが、甲陽学院中の国語の「論説文」はなかなか骨のある、スジガネの入った内容の文章を採択しているのです。灘中の場合は随筆文を含み、やや「ソフト」感がありますよ。もしかしたらワザと?見た目や口当たりの良さそうな文を一日目に持って来ているのかな、などと意地悪く考えてしまう私(当塾教室長)。どうもゴメンナサイ!
甲陽学院中の出題の作家を見て見ましょう。2015年野矢茂樹『子供の難問』、2013年毛利衛『宇宙から学ぶユニバソロジのすすめ』2018年岡田美智男『「弱いロボット」の思考』、これらはその頃の日本の「宇宙開発」の世相を反映しているようです。2010年は「はやぶさ」が帰還、2012年の火星無人探査車「キュリオシティ」の成功、2013年日本が新型ロケット「イプシロン」の打ち上げに成功…
では2020年は?一日目が山極寿一『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』、二日目が藤谷治『小説は君のためにある』です。笑ってしまうのが一日目の『ゴリラ…』からのこの選択肢をご覧ください!
問三 次にあげた(傍線部)②「時は金なり」のように時間に関することばについて、□に入る適当な漢字一字を書きなさい。
ア 早起きは□文の得 イ 急がば□れ ウ □の上にも三年
エ 待てば□路のひよりあり オ 一日□秋の思い
問四(傍線部)③とはこの場合どのようなものですか。次の中からふさわしいものを選び、記号で答えなさい。
ア お金で短縮できる時間がある。 イ お金で短縮できない時間がある。
ウ お金と同じように時間は大事だ。 エ お金より時間のほうがもっと大事だ。
オ お金で置きかえられる時間がある。 カ お金で置きかえられない時間はない。
問五(傍線部)④以降で「ゴリラ」の例を使って説明したのはなぜですか。答えなさい。
お、お金?受験生は当日確かに「時は金なり」的な思いでしょうよ!この論説文の論旨を追っていくとそんなに難解ではないのですが、極めつけは記述問題。端的に言うと「人々の信頼に費やす時間はお金では買えないよ」ということを述べるのですが…なんとシニカルな問題提起をした「入試問題」なのでしょう。何ということを答えさせるのでしょう。「明朗・溌剌・無邪気」ってケラケラ笑ってられないって!
ともすると「お坊ちゃん」気質の受験生が多いイメージの甲陽学院中ですが、こと国語の入試問題においては「オコチャマ」には容赦のないものだと言えます。「正直何言ってるのかぜ~んぜんわっかんないけど、取り敢えず傍線部近くにある言葉を引っ張ってきて、それらしく繋げて書いておけばいいや。だって、塾の先生も『そうやって部分点を稼げばいい。合格には満点なんて必要ないから。』って言ってたもん。」はい、ダメ~!こんな「邪」な気持ちがあっては、やはり甲陽学院中には合いませんね。なんたって「明朗・溌剌・無邪気」ですから。御後が宜しいようで。では、また。
2020/08/11
【2020年入試】国語の傾向と対策~甲陽学院中編①~
神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。今回は甲陽学院中の入試国語問題の傾向等についてお伝えします。
私(当塾教室長)は中高生時代に学校の図書館の蔵書をすべて読み、学校から表彰されたこともある文学好き。今も服や靴よりは「本」。家族も呆れるほどです。そんな私がいつもステキだ、と思うのが甲陽学院中学の国語の入試問題です。何がステキかって?甲陽学院中の入試問題に「お手本のような、しかし現代的な生き生きとした少年たちの成長曲線とその座標」が読み取れるからです。
私は入試国語を指導するときに「『同年代の友人』が出てきたときのパターン」なるものを塾生に少し教えています。簡単に言うと「少年が主人公でやや文章が長ければ、主人公は『成長』してエンディングを迎える」甲陽学院中の過去の物語の出題を紐解いてみると2014年は朝井リョウ「世界地図の下書き」、2016年は小川糸「サーカスの夜に」、2017年有川浩「アンマーとぼくら」、そして2020年は古内一絵「リコリスの兄弟」。
甲陽学院中は一日目・二日目と二日入試でも、その入試傾向を両日で変えません。塾関係者の中には「何で二日入試をするのだろう?」といった声も。そうですよね、灘中の国語など一日目は文章の読解問題もありますが、それも「語句」及び文法事項をタップリ含んだものですし、後はご存知の語句問題。二日目が論説文と物語文そして詩の読解。ハッキリと出題傾向が分かれていて対策も立てやすいかも。それに対して、甲陽学院中は同じ二日入試の国語でも「論説文・物語文」の繰り返しです。厳密に言えば、一日目、二日目の物語文ではやや違いもあるのですが、「少年が」あるいは「少年だった『僕』が」登場してきて「成長する」それについて記述させる問題を出題しています。灘中学の物語文の入試問題よりハッキリしているようです。それでは2020年第一日目設問から見ていきましょう。
問二(傍線部)①で翔馬が感じている気持ちとしてふさわしいものを次の中から二つ選び、記号で答えなさい。
ア 兄に対する反抗から自転車の前列に乗ったことへの後悔。
イ 兄の選手としての未来を台無しにした自分に対する怒り。
ウ 自分より素晴らしい水泳選手であった兄に対するねたみ。
エ 周りの大人を失望させてしまったことによる後ろめたさ。
オ 事故の後兄と仲たがいをしてしまったことによる悲しみ。
問四(傍線部)③について、次の(1)・(2)の問いに答えなさい。
(1)翔馬自身は、翔馬が颯馬とはどう「違う」と考えていますか。
(2)堀川先生は、翔馬が颯馬とはどう「違う」と考えていますか。
問六(傍線部)⑤とありますが、本文全体をふまえると、ここで翔馬が久しぶりに颯馬の名前を呼ぶことにはどういう意味がありますか。答えなさい。
問二の選択肢の内容!「選択肢の問題の場合はだなぁ、暗ーい内容の答は×。テーマが明るいモノが大体〇。だから内容をあまり読まなくてもいいから、大雑把にでも二つくらいに絞っておくこと。」こんな教え方をされている、どっかの塾のセンセイ方にモノ申す!少なくとも甲陽学院中の入試国語ではチョット通用しないかもしれませんね、なぜかって?甲陽学院中の国語入試問題は大学入試問題のプチ型(?)ですから。もっと言うと京都大学の入試問題に似て非ならざるモノだから。そこにはオコチャマ的な無邪気さから脱皮すべく、傷つきながら目覚める「少年」の姿があるからです。
「どんな問題でもこの通りに当てはめれば正解が出る」それを喉から手が出るほど望む残念な親と、それを教えますよと平気で嘘を吹き込む残念な塾講師に一言。そういうのはAIに任せたらいいんじゃないですか?それこそ子どもたちを「受験マシーン」にする考え方なんだよ。もはやアンタたちの出る幕じゃないよ。引っ込んでな!甲陽学院の国語、次回も続けましょう。では、また。